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結論:「冷蔵庫を守るか」で選ぶ容量が変わる

防災用ポータブル電源の選び方は、突き詰めると**「スマホと灯りだけ守るのか、冷蔵庫まで守るのか」**の二択だ。ここを決めないまま容量表だけ眺めても答えは出ない。

  • スマホ・照明・情報収集まで → 288Wh級(Anker Solix C300 / EcoFlow RIVER 3 Plus)で数日しのげる
  • 調理家電・電気毛布・在宅ワークまで → 632Wh級(Jackery 600 Plus)
  • 冷蔵庫まで含めたい → 1056Wh級(Anker Solix C1000)でも冷蔵庫だけで約1日。ソーラーパネル併用か2000Wh級が前提

最後の点は正直に書いておきたい。「1000Whあれば安心」という説明を見かけるが、後述する計算のとおり、冷蔵庫は思っているより電気を食う

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まず「何日分」を決める — 国の備蓄目安は最低3日・できれば1週間

農林水産省は家庭備蓄について、最低3日分、できれば1週間分を推奨している。過去の災害ではライフライン復旧に1週間以上を要したケースが多く、支援物資が3日以上届かないことも想定されるためだ(出典: 農林水産省「家庭備蓄ポータル」)。

食料と同じ物差しを電気に当てはめると、**「3日間、最低限の電気を維持できるか」**が現実的な設計目標になる。ここから逆算していく。

消費電力から「もつ日数」を計算する

ポータブル電源の容量はWh(ワットアワー)で表される。Wh ÷ 機器の消費電力(W) = 使用可能時間(h) が基本式だ。ただし変換ロスがあるため、実際には公称容量の80〜90%程度が使えると考えたほうが安全側になる。

機器消費電力の目安1日あたりの消費
スマホ充電(1回)約15〜20Wh/台
LEDランタン約5W5時間点灯で約25Wh
ノートPC約30〜60W4時間で約120〜240Wh
DC扇風機約20W8時間で約160Wh
電気毛布(弱)約30W8時間で約240Wh
家庭用冷蔵庫約0.7〜1.0kWh(700〜1000Wh)

※冷蔵庫の値は、省エネ基準の年間消費電力量250〜350kWh/年のモデルを365日で割った概算です。実際は庫内温度・開閉頻度・季節で変動します。他の機器はメーカー一般値からの目安で、編集部の実測値ではありません。

この表を見ると分かるが、スマホ4人分+ランタン+ラジオなら1日100Whに届かない。288Whあれば3日は十分持つ計算だ。一方で冷蔵庫を1台入れた瞬間に必要容量が10倍近くに跳ね上がる。ここが設計の分岐点になる。


容量別おすすめ5機種

① Anker Solix C300 — 288Wh/4.1kg。「まず1台」の最適解

項目仕様(公称)
容量288Wh
定格AC出力300W(瞬間最大600W)
ポートAC×3/USB-C×3(140W×2・15W×1)/USB-A×1/シガーソケット×1(計8)
重量約4.1kg
電池リン酸鉄・3,000サイクル
満充電約68分(AC)
参考価格通常 ¥34,990

4.1kgという重量が効いてくる。防災用品は「持ち出せるか」が実用性を左右するが、この重さなら女性や高齢者でも階段を運べる。USB-C 140W×2を備えるので、ノートPCの急速充電にも対応する。

スマホ4人分+ランタン+ラジオという最小構成なら、288Whで3日どころか1週間近くまかなえる。「まず1台目」として最も推しやすい容量だ。

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② EcoFlow RIVER 3 Plus — 286Wh/後から容量を足せる

項目仕様(公称)
容量286Wh(拡張バッテリー接続で最大858Wh)
定格AC出力600W(X-Boost使用時900W)
電池リン酸鉄・3,000回後も初期容量の80%を維持
UPS切替10ミリ秒未満

C300とほぼ同容量ながら、定格600WとAC出力が倍で、さらに拡張バッテリー(EB290/EB580)で最大858Whまで増設できるのが最大の違いだ。「今は予算を抑えたいが、将来的に容量を増やすかもしれない」という人に向く。

X-Boost機能をオンにすると900Wまで動かせると公称されているが、これは出力波形を調整して見かけ上の対応幅を広げる仕組みなので、精密機器やモーター系では素直に定格内で使うのが無難だ。

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③ Jackery ポータブル電源 600 Plus — 632Wh/サイクル寿命4,000回

項目仕様(公称)
容量632Wh
定格AC出力800W(瞬間最大1,600W)
重量約7.3kg
電池リン酸鉄・約4,000サイクル(4,000回後も初期容量の70%を維持)
充電緊急速充モードで約1時間
UPS切替20ミリ秒未満

4,000サイクルという寿命の長さが光る。1日1回使っても約10年という計算で、防災用として長く置いておく前提なら心強い。定格800Wあれば電気ケトルや小型の調理家電も選択肢に入ってくる。

7.3kgはC300の倍近いが、片手で持ち運べる範囲。「スマホと灯り」から一段上がって温かいものを口にできるラインがこの容量帯だ。

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④ Anker Solix C1000 — 1056Wh/定格1500W。家電を動かす本命

項目仕様(公称)
容量1056Wh
定格AC出力1500W(SurgePad時 瞬間最大2000W)
ポートAC×6/USB-C×2/USB-A×2/シガーソケット×1
重量約12.9kg
電池リン酸鉄・3,000サイクル以上(容量80%到達まで)
満充電約58分(超急速モード)
参考価格通常 ¥119,900

定格1500Wは日本の家庭用コンセント(100V/15A)の上限にほぼ一致する。つまり「壁のコンセントで使える家電なら、ほぼそのまま動かせる」水準ということだ。AC×6口という多さも、家族で同時に使う停電時には効いてくる。

ただし冒頭で触れたとおり、冷蔵庫を繋ぐと1日でほぼ空になる。C1000を「冷蔵庫用」と位置づけるなら、次に紹介するソーラーパネルによる日中の再充電まで含めて設計するべきだ。

なお12.9kgは、階段を持って降りるにはそれなりの覚悟がいる重さだ。据え置き前提と考えたほうがいい。

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⑤ BLUETTI AORA 200(旧Elite 200 V2) — 2073Wh/冷蔵庫を数日守る

項目仕様(公称)
容量2073Wh
定格AC出力2200W
電池リン酸鉄

容量2073Whなら、先ほどの冷蔵庫の概算(1日0.7〜1.0kWh)に照らして冷蔵庫だけで2〜3日、他の機器を絞ればもう少し伸びる。定格2200Wは日本仕様のポータブル電源としては最上位クラスで、100V/20A回路まで想定した設計だ。

価格は20万円台と一気に上がるため、「1台目」ではなく「本気で在宅避難を設計する人の選択肢」になる。

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一覧比較表

機種容量定格AC出力重量サイクル想定用途
Anker Solix C300288Wh300W約4.1kg3,000回スマホ・照明・情報
EcoFlow RIVER 3 Plus286Wh(最大858Wh)600W3,000回拡張前提・UPS用途
Jackery 600 Plus632Wh800W約7.3kg約4,000回調理・電気毛布
Anker Solix C10001056Wh1500W約12.9kg3,000回以上ほぼすべての家電
BLUETTI AORA 2002073Wh2200W冷蔵庫を数日

※すべてメーカー公称値です。価格は変動するため本文中の参考価格は執筆時点(2026年7月)のものです。


選ぶときに見落としやすい3つのポイント

1. 日本仕様と海外仕様で定格出力が違う

同じ型番でも、日本仕様は100V/15A由来で定格1500W前後、米国仕様は1800Wというケースがある。海外レビューのスペックをそのまま信じると、実際より高い数値を前提にしてしまう。購入時は必ず日本の公式サイトの値を確認したい。

2. 「満充電◯分」は超急速モードの数値

Anker Solix C1000の約58分、Jackery 600 Plusの約1時間はいずれも急速充電モードの公称値だ。急速充電は電池への負荷が大きいため、日常の維持充電では通常モードを使うのが一般的な運用になる。

3. パススルー充電(充電しながら給電)の可否

停電が復旧したあと、次の停電に備えて充電しながら機器も使いたい場面がある。多くの上位機種は対応しているが、機種によって挙動が異なるので、UPS機能の有無とあわせて確認しておきたい。


まとめ

  • 最初の1台なら288Wh級。Anker Solix C300(4.1kg)は持ち出せる重さで、スマホ・照明・情報収集なら3日を余裕でカバーする
  • 632Wh級で「温かいもの」が視野に入る。Jackery 600 Plusは約4,000サイクルと寿命面でも防災向き
  • 冷蔵庫まで守るなら1056Whでも1日。ソーラーパネル併用か2000Wh級が現実解
  • リン酸鉄(LiFePO4)は防災用途の事実上の標準。今回の5機種はすべて該当する
  • 半年に1回の点検充電をルール化しておくこと。いざという時に空だったら意味がない

停電対策は「買って安心」で終わりがちだが、実際に効くのは自分の家で何を動かしたいかを1度計算しておくことだ。この記事の消費電力表を使えば、必要な容量は10分で出せる。