Even Realities Even G2とは:カメラを捨てて「見る情報」に振り切った36gのスマートグラス
Even Realities「Even G2」は、両眼MicroLEDプロジェクターと導光板レンズを組み合わせたディスプレイ型スマートグラスです。価格は99,800円(税込、2026年8月時点)、重量は約36g。最大の個性は、外向きカメラと外部スピーカーを「あえて搭載していない」と明記していることです。写真も動画も撮れず、音楽再生も通話もできません。その代わり、視界にリアルタイム翻訳の字幕、テレプロンプターの原稿、徒歩ナビ、会話のリアルタイム文字起こしが浮かびます。撮影機能を捨てたことで「録られているかもしれない」という周囲の警戒を招きにくく、会議室や商談の場に持ち込みやすい。この割り切りこそがEven G2という製品のすべてです。
なお本体の流通は限定的で、楽天市場では2026年8月11日時点の編集部調査でクリップ&ポーチなどのアクセサリ(ビックカメラ出品、16,800円)しか確認できず、本体の取り扱いは見つかりませんでした。購入経路は後述します。
「2026年4月発売」は誤り。日本での時系列を正しく押さえる
Even G2をめぐる情報でいちばん取り違えられやすいのが発売時期です。日本での初発売は2025年11月19日で、公式オンラインストアとJUN GINZA銀座、JUN GINZAヒルトンプラザ名古屋での取り扱いから始まりました。その後、2026年3月19日にTD SYNNEX経由で流通が拡大し、2026年4月16日にビックカメラ(AKIBA・名古屋ゲートタワー)とヨドバシカメラ(マルチメディアAkiba・梅田)での量販店販売が始まっています(予約受付は3月19日から4月15日)。
つまり2026年4月という日付は「量販店に並び始めた日」であって発売日ではありません。「2026年4月発売の新顔」と紹介している記事を見かけたら、それは半年ぶんの実績を無視した記述です。すでに2025年秋から国内ユーザーの手に渡っている製品として評価するのが正確です。
スペック:緑単色・一階調のテキスト表示という潔さ
Even G2のディスプレイは独自光学「HAO 2.0」を採用し、前世代比でテンプル(つる)の厚みを約53%削減しています。約36gという重量と、パッと見では普通のメガネにしか見えない見た目は、この光学系の小型化があってこそです。
表示は640×350ピクセル、視野角27.5度。色は緑の単色・一階調で、階調表現がないため画像や動画は表示できません。表示できるのは文字と記号が中心です。ここは弱点であると同時に設計思想でもあります。カラーの映像を映すには光学系も消費電力も大きくなり、36gには収まりません。両眼視差を利用した多層フローティング表示に対応しており、表示距離を変えたりポップアップのような見せ方をしたりできるため、単色でも情報の階層は付けられます。
フレーム形状はG2 AとG2 Bの2種類。度付きは-12Dから+12Dまで対応し、普段のメガネを置き換える前提で作られています。
Even G2とHTC VIVE Eagleを並べて見る
同じ「2026年の日本市場で買えるAIグラス」でも、Even G2とHTC VIVE Eagleは正反対の設計です。片方はディスプレイがあってカメラがない、もう片方はカメラがあってディスプレイがない。価格帯が近いぶん、この差を理解しないまま選ぶと確実に後悔します。
| 項目 | Even Realities Even G2 | HTC VIVE Eagle |
|---|---|---|
| 価格(税込・2026年8月時点) | 99,800円 | 82,500円(サングラス/クリアレンズ)、98,000円(調光レンズ) |
| 重量 | 約36g | Mサイズ48.8g/Lサイズ51.5g(レンズ込み) |
| ディスプレイ | 両眼MicroLEDプロジェクター+導光板(HAO 2.0) | 非搭載 |
| 解像度・視野角 | 640×350ピクセル/27.5度 | 該当なし |
| 表示色 | 緑の単色・一階調(画像・動画表示は不可) | 該当なし |
| カメラ | 非搭載(意図的な仕様) | 約1,200万画素・超広角、動画1512×2016/30fps |
| スピーカー | 非搭載(音楽再生・通話は不可) | ステレオスピーカー |
| 翻訳の方式 | 視界に表示するリアルタイム翻訳(双方向) | カメラで見たものの画像翻訳 |
| 翻訳対応言語数 | 29言語 | Gemini選択時71言語/GPT選択時59言語 |
| 文字起こし | 会話サポート(リアルタイム文字起こし+キーワード注釈) | VIVE AI Notes(文字起こし+AI要約、12言語) |
| バッテリー | 本体単体で2日以上(公称)+充電ケース付属 | 235mAh、連続音楽再生最大4.5時間/連続通話3時間以上/待受最大36時間 |
| 防塵防水 | 未公表 | IP54 |
| 度付き対応 | -12D〜+12D(標準は単焦点のみ) | 対応(眼鏡市場・サンクスオプティカルグループ店舗で交換) |
| 操作 | 別売スマートリングEven R1(41,800円)でタップ・スクロール | 音声操作「Hey VIVE」 |
| サブスク費用 | なし(追加課金なしで全機能利用可) | VIVE AI Notesは3カ月無料トライアル、以後の条件は未公表 |
| 日本での販売 | 2025年11月19日初発売、2026年4月16日からビックカメラ・ヨドバシカメラ | 2026年4月24日発売、au +1 collection・HTCオンライン等 |
※すべてメーカー公称値です。編集部による実機計測は行っていません。
比較して見えてくるのは、この2機種が競合ではなく棲み分けの関係だということです。Even G2は「見る情報」に特化し、VIVE Eagleは「撮る・録る・聞く」に特化しています。ランニングコストの考え方も違い、Even G2がサブスク不要と明言しているのに対し、VIVE EagleのAI Notesは3カ月無料トライアル後の料金条件が公表されていません。長く使うつもりなら、この不確実性は価格差17,300円と天秤にかける価値があります。より広くAIグラス全体を見渡したい人は、2026年のAIスマートグラス比較もあわせて確認してください。
4つの主力機能で何ができるのか
会話サポート
目の前の会話をリアルタイムで文字起こしし、キーワードに注釈を付けて表示します。聞き取りにくい環境での確認、専門用語が飛び交う打ち合わせ、外国語まじりの会話などで効きます。手元のスマホを見下ろす必要がないため、相手から目線を外さずに済むのが最大の実利です。
テレプロンプター
PDF・DOCX・TXTを読み込んで原稿を視界に流せます。プレゼン、社内説明会、動画収録、司会進行といった場面で、手元のカンペを見る動作そのものを消せます。カメラ非搭載で「撮影していない」ことが構造的に保証されるため、聴衆に不信感を与えにくいのも相性の良さにつながります。
リアルタイム翻訳
29言語の双方向翻訳に対応します。相手の発話が視界に字幕として出るため、通訳アプリの画面を二人でのぞき込む必要がありません。海外出張や訪日客対応での実用性は高い部類です。
徒歩ナビとEven AI
徒歩ナビと音声アシスタントEven AIも備えます。ただしナビは徒歩のみの対応で、レビューでは歩行中は表示が揺れて読みにくいという指摘も出ています。自転車や自動車での利用は想定外と考えるべきです。
カメラを載せないという選択が生む価値
AIグラスが会議室や飲食店で敬遠される最大の理由は、周囲が「撮られているのでは」と身構えることです。Even G2はこの問題を機能で解こうとせず、そもそもカメラを載せないことで構造的に解消しました。撮影ができないので、撮影の同意を取る必要も、録画ランプの有無を説明する必要もありません。守秘義務のある商談や、撮影禁止の現場に持ち込める可能性が現実的に高いのは、この設計あってこそです。
裏を返せば、写真も動画も一切残せません。旅行の記録も、作業手順の撮影も、ハンズフリー通話もできない。ここを許容できるかが購入判断の最初の分岐点になります。同じディスプレイ搭載型でも設計思想が異なる製品との比較は、RokidとEven G2の比較記事で詳しく扱っています。
買う前に知っておきたい弱点
正直に書きます。Even G2には見過ごせない制約が複数あります。
表示は緑の単色・一階調のテキストと記号のみで、カラー画像や動画は一切表示できません。スマホの画面をそのまま視界に持ってくる製品を期待すると、まったく別物です。
歩行中はレビューで表示が揺れて読みにくいと指摘されており、ナビも徒歩のみの対応です。移動しながらの連続利用は得意分野とは言えません。
本体にセキュリティロック機能がない点もレビューで指摘されています。置き忘れや盗難に遭った場合、第三者がそのまま使える状態になり得ます。会話の文字起こしという機微な用途を担う機器としては、運用側で管理を徹底する必要があります。
度付きは標準が単焦点のみで、遠近両用は提携店での別途対応です。老眼が進んでいる層には追加の手間と費用が発生します。
AIチャットは表示の自動消灯が早く、長文の調べ物には不向きというレビュー指摘もあります。会話の合間に短い答えを得る用途に最適化されていると理解しておくのが実態に近いでしょう。
そして操作面です。タップ・スクロール操作をフルに使うには別売のEven R1(41,800円)が実質的に必要で、本体99,800円だけで完結する製品ではありません。予算はここまで含めて考えるべきです。
さらに防塵防水性能は公表情報では確認できないため、本記事では未公表と扱います。雨天での扱いは慎重にしてください。
こんな人に向く、こんな人には向かない
向いているのは、会議・商談・講演・接客といった「人と向き合う時間」が長く、その最中に文字情報を見たい人です。テレプロンプターや会話の文字起こし、外国語対応が業務に直結する人ほど元が取れます。普通のメガネに見える見た目と36gという軽さは、一日中かけっぱなしにできることを意味し、常時装着が前提の使い方と噛み合います。サブスク不要という点も、業務ツールとして長期に組み込むうえで安心材料です。
向いていないのは、まず撮影がしたい人。次に、カラー映像や動画を視界に表示することを期待している人。そして移動中の常時ナビを主目的にする人です。撮影を軸にするならカメラ搭載型が正解で、その代表格についてはRay-Ban Meta(Gen 2)の解説記事も参考になります。また、本体だけで完結させたい、追加投資はしたくないという人も、Even R1前提の操作系とは相性が良くありません。
どこで買えるか
購入経路は公式オンラインストア、JUN GINZA銀座、JUN GINZAヒルトンプラザ名古屋、そして2026年4月16日以降はビックカメラ(AKIBA・名古屋ゲートタワー)とヨドバシカメラ(マルチメディアAkiba・梅田)です。全国どこの店舗でも試せるわけではなく、実機を試着できる場所は依然として限られます。度付き対応やフレーム形状の選択がある製品だけに、可能なら実店舗で顔に載せてから決めたいところです。
楽天市場については、2026年8月11日時点の編集部調査ではアクセサリ(クリップ&ポーチ、ビックカメラ出品、16,800円)のみで、本体の取り扱いは確認できませんでした。ポイント還元を当て込んで楽天で本体を探すのは、現時点では空振りになる可能性が高いと考えてください。
まとめ
Even G2は「何ができるか」より「何をしないと決めたか」で理解すべき製品です。カメラを載せない、スピーカーを載せない、色を捨てる。そうして得たのが約36gの軽さ、2日以上のバッテリー、普通のメガネに見える外観、そして撮影懸念のない場に持ち込める適性でした。99,800円に別売リング41,800円が実質上乗せされる価格は決して安くありませんが、会議や商談で日常的に使う人にとっては、機能の足し算ではなく引き算に価値がある一台です。逆に、一台で撮影も再生もこなす万能機を求めているなら、この製品は最初から候補に入れないほうが幸せになれます。
出典
- https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2511/19/news127.html
- https://www.moguravr.com/even-g2-japan-sale/
- https://www.moguravr.com/even-realities-g2-japan-retail/
- https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2064749.html
- https://ai.watch.impress.co.jp/docs/review/2106702.html
- https://www.au.com/information/topic/mobile/2026-003/
- https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000237.000033579.html
- https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/2103292.html
- https://www.techno-edge.net/article/2026/04/22/5011.html
- https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/2604/21/news093.html