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結論:動画運用で選ぶS1R II、静止画の物理で勝つZ8

この記事は金額を度外視して性能だけで評価する。もっとも、この2機種に関しては価格を持ち出しても差がつかない。LUMIX S1R IIは市場想定475,000円前後・実売最安で約46.3万円から、Nikon Z8は実売最安で約46〜52万円。ほぼ同じ財布から出る2台であり、だからこそ「どちらが安いか」ではなく「どちらの設計が自分の現場に噛み合うか」だけが論点になる。

  • LUMIX S1R IIが向く人 — 5.8K Apple ProRes RAW HQの内部記録を使いたい。外付けSSD記録でメディア運用を軽くしたい。約795gという軽さをジンバルやリグの余力に回したい。像面位相差779点のAFで動画を回したい。B.I.S.中央8.0段・周辺7.0段の手ブレ補正で手持ちを増やしたい。
  • Nikon Z8が向く人 — 積層型CMOSの読み出し速度が要る。電子シャッターのローリング歪みを構造的に潰したい。N-RAW 12bitの8.3K/60p内部記録が必要。EXPEED 7と493点・9種被写体検出のAFで動体を追いたい。3000cd/m²対応のEVFで直射日光下でも見たい。C120の約120コマ/秒で一瞬を拾いたい。

ひとことで言えば、動画のワークフローと軽さで選ぶならS1R II、センサーの物理と動体性能で選ぶならZ8。8K/30Pという最も目立つスペックが同じだからこそ、差はその下の層に隠れている。

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スペック比較表

項目Panasonic LUMIX S1R II (DC-S1RM2)Nikon Z8
発売2025年3月27日2023年5月26日
センサーフルサイズ(35.8×23.9mm)裏面照射CMOS(積層型ではない)FX 積層型CMOS(Z9と同型)
有効画素数約4430万画素4571万画素
グローバルシャッター非搭載非搭載
シャッター機構メカシャッター搭載メカシャッターレス
メカ連写最高10コマ/秒—(メカシャッターなし)
電子連写SHモード 40コマ/秒(AFC対応)約20コマ/秒(AF/AE追従)
特殊高速モードSHプリ連写対応(遡り秒数は公式仕様表で明記を確認できず。レビューでは約1.5秒と報告されている)ハイスピードフレームキャプチャー+ C30/C60/C120(C120は約120コマ/秒・約1100万画素JPEG)、プリキャプチャー対応
AF測距像面位相差779点493点
被写体認識リアルタイム認識AF(人物・動物・車・バイク&自転車・列車・飛行機)9種(人物・犬・猫・鳥・自転車・バイク・車・列車・飛行機)+飛行機専用モード
画像処理—(公称エンジン名は本記事の参照範囲で未取得)EXPEED 7
EVF約576万ドット/約0.78倍約369万ドット/約0.8倍/輝度3000cd/m²対応
EVFリフレッシュレート—(公式仕様表で確認できず。レビューでは最大120fpsとされる)—(公式仕様表に記載なし)
動画(最高)8K/30P(LUMIX初)、C4K/60P、4K/120P8K30P、4K120P
RAW内部記録5.8K Apple ProRes RAW HQN-RAW 12bit(8.3K/60p)、ProRes RAW HQ
手ブレ補正B.I.S. 中央8.0段・周辺7.0段(Dual I.S.2 7.0段)最大6.0段(シンクロVR)
バッテリー(CIPA)約340枚(モニター)・約280枚(LVF)約340〜370コマ
重量約795g約910g
メディアスロットCFexpress Type B+SD(UHS-II)+外付けSSD記録対応CFexpress Type B+SD(UHS-II)
参考価格市場想定475,000円前後/実売最安 約46.3万円〜実売最安 約46〜52万円

※すべてメーカー公称値です。価格は変動するため参考価格は執筆時点(2026年8月)のものです。

センサー:積層か非積層か、という埋めようのない差

先に誤解を潰しておく。S1R IIのセンサーは積層型ではない。フルサイズ(35.8×23.9mm)有効約4430万画素の裏面照射CMOSであり、裏面照射と積層は別の技術である。裏面照射は配線層を受光面の裏に回して集光効率を上げる構造、積層は信号処理回路をセンサーの下に別層として重ねて読み出しを高速化する構造だ。S1R IIは前者のみ、Z8はZ9と同型の積層型CMOSを積む。グローバルシャッターはどちらも非搭載である。

この構造差が出てくる場所は3つある。ひとつ、電子シャッター時のローリングシャッター歪み。ふたつ、電子シャッター高速連写の持続性能。みっつ、ブラックアウトやEVFの表示遅延といったライブビューの挙動である。Z8については読み出し約3.7msでローリング歪みはほぼ無いと評されている。対してS1R IIは、非積層ゆえに電子シャッターの歪みと連写の持続で積層旗艦に劣るという評価が示されている。

誤解のないように書くが、これは「S1R IIのセンサーが悪い」という話ではない。有効約4430万画素と4571万画素は約3%の差しかなく、解像という一点では実質互角だ。むしろ非積層を選んだことでコストを抑え、その予算を8K/30Pと5.8K ProRes RAW HQ内部記録、そして外付けSSD対応に振り分けたのがS1R IIの設計である。削った場所が明確で、削った理由も明確という意味では、むしろ潔い。

問題は、その削り方が効く撮影と効かない撮影がはっきり分かれることだ。三脚に据えた風景、スタジオ、静物、そして電子シャッターを常用しない撮り方であれば、非積層のデメリットはほとんど表に出ない。逆に、電子シャッターで動く被写体を追う、パンの速い動画を撮る、蛍光灯下のフリッカーと戦うといった場面では、構造差はそのまま画に出る。ここは価格やファームウェアで埋まる差ではなく、シリコンの層構造の話である。

連写:40コマ/秒という額面と、その中身

コマ数だけ見ればS1R IIが勝つ。電子シャッターのSHモードで40コマ/秒、しかもAFC(コンティニュアスAF)に対応する。メカシャッターでは最高10コマ/秒。一方のZ8は約20コマ/秒(AF/AE追従)で、数字の上では半分だ。

ただしZ8はメカシャッターレス機であり、この約20コマ/秒はRAWを含む通常の撮影モードでの数字である。加えてハイスピードフレームキャプチャー+としてC30/C60/C120を持ち、C120では約120コマ/秒に達する。ただしC120は約1100万画素のJPEG限定という制約付きで、これを「120コマ/秒の高画素連写」と読むのは誤りだ。プリキャプチャーにも対応しており、シャッターを切る前に遡って記録できる。

S1R II側もSHプリ連写に対応する。ただし遡り秒数については公式仕様表での明記を確認できず、レビューでは約1.5秒と報告されている段階だ。仕様として保証された数字ではないため、この点は割り引いて考えたい。

実務上の整理はこうなる。単発のコマ数ではS1R II、撮り続けたときの安定と歪みの少なさではZ8。40コマ/秒という数字は魅力的だが、非積層センサーで高速電子シャッターを回すということは、読み出しに時間がかかる状態で高速連写しているということでもある。動く被写体で歪みが問題になる領域は、Z8より手前に来る。逆に言えば、被写体の動きが穏やかで、単に決定的瞬間の刻み幅を細かくしたいだけなら、S1R IIの40コマ/秒は素直に有効だ。

AF:779点の像面位相差 vs 493点+EXPEED 7

測距点の数はS1R IIが像面位相差779点、Z8が493点。数字だけならS1R IIが上回る。加えてS1R IIはリアルタイム認識AFで人物・動物・車・バイク&自転車・列車・飛行機を認識する。

Z8は493点に対し、被写体検出を9種(人物・犬・猫・鳥・自転車・バイク・車・列車・飛行機)備え、さらに飛行機専用モードが追加されている。処理はEXPEED 7で、これはフラッグシップZ9と同じエンジンである。Z8はZ9の性能をほぼそのまま小型・安価なボディに移した機種という評価を受けており、AF系の素性はフラッグシップ由来だ。

測距点数の多寡がそのまま追従精度の順位にならないのは、カメラのAFでは常識に属する。実際に効くのは、認識アルゴリズムの成熟度、被写体が一時的に隠れたときの復帰の速さ、そして読み出し速度に支えられたAF演算の頻度である。最後の項目でZ8は積層センサーという物理的な後ろ盾を持つ。測距点779点という数字だけでS1R IIが動体AFで優位に立つ、と読むのは危険である。

一方、S1R IIの779点が確実に効く領域もある。動画撮影時のフォーカス送りだ。像面位相差の測距点が画面を細かく覆っていることは、動画でのピント面の移動を滑らかにし、被写体が画面内を移動する際の食いつきを助ける。パナソニックはコントラストAF主体のDFD方式から像面位相差へ移行した経緯があり、S1R IIはその成果を積んだ世代にあたる。動画中心の運用であれば、この点はカタログのコマ数より重要かもしれない。

動画:8K/30Pは同じ。分かれるのはRAWの規格と記録先

ここがこの記事の核心である。両機とも8K/30Pに対応し、両機とも4K120P(S1R IIは4K/120P、加えてC4K/60P)に対応する。目立つスペックが揃っているため、比較は一段深い層で行う必要がある。

内部RAWの規格が最初の分岐点だ。S1R IIは5.8K Apple ProRes RAW HQの内部記録に対応する。Z8はN-RAW 12bitを8.3K/60pで内部記録でき、さらにProRes RAW HQの内部記録にも対応する。解像とフレームレートの上限を単純比較すると、8.3K/60pのZ8が上だ。ただしN-RAWはニコン独自形式であり、扱える編集環境かどうかが前提になる。ProRes RAW中心のワークフローを組んでいるなら、S1R IIの5.8K ProRes RAW HQは編集の入り口で摩擦が少ない。

もうひとつの分岐点が記録先である。S1R IIはCFexpress Type BとSD(UHS-II)に加えて外付けSSD記録に対応する。これは動画運用では地味に大きい。CFexpress Type Bは高速だが高価で容量あたりの単価が重く、長尺のRAW収録では枚数が要る。外付けSSDならコンシューマ向けの大容量ドライブをそのまま使え、収録後にカードリーダーを介さず接続できる。Z8はCFexpress Type B+SD(UHS-II)の構成で、外付けSSD記録の対応は本記事の参照範囲では確認していない。

**正直に書いておくべき注意点がひとつある。**4K120Pや8K撮影時のクロップ有無について、両機とも公式仕様表からは明記を確認できなかった。動画のクロップは画角がそのまま変わるため購入後に効く重大な差だが、ここでは推測で埋めず「未確認」として扱う。導入前に必ずメーカーの仕様表と対応表を自分の使用フォーマットで確認してほしい。長時間収録時の発熱制限についても同様である。

同じ4571万画素クラスの8K機として、Z8をキヤノン機と突き合わせたNikon Z8とEOS R5 Mark IIの比較記事も、動画RAWの規格差を考えるうえで参考になる。

手ブレ補正・EVF・重量:運用体力の差

手ブレ補正はS1R IIが優位だ。B.I.S.で中央8.0段・周辺7.0段、対応レンズとのDual I.S.2で7.0段という公称値を持つ。Z8は最大6.0段(シンクロVR)である。手持ちで低速シャッターを切る、あるいは歩きながら動画を回すといった場面では、この2段近い差は無視できない。

EVFは方向性が違う。S1R IIは約576万ドット/約0.78倍で、ドット数ではZ8の約369万ドット/約0.8倍を明確に上回る。ただしZ8は輝度3000cd/m²対応という別の武器を持つ。晴天の屋外や逆光でファインダーを覗いたときの見えやすさは、ドット数ではなく輝度が効く領域だ。倍率はZ8の約0.8倍がわずかに大きい。リフレッシュレートについては、S1R IIは公式仕様表で確認できずレビューで最大120fpsとされる段階、Z8も公式仕様表に記載がない。ここは両機とも「不明」として扱うのが誠実である。

重量はS1R IIが約795g、Z8が約910gで、差は約115g。ジンバル運用では積載可能重量とバランスの余裕に直結し、手持ちの長時間撮影では終盤の疲労に効く。ただしZ8はメカシャッターレスで、シャッター幕という消耗部品を持たない。重量で選ぶか、機構の耐久性で選ぶかという別軸の判断が入る。

バッテリーはどちらも褒められない。S1R IIがCIPA約340枚(モニター)・約280枚(LVF)、Z8が約340〜370コマである。S1R IIはEVFを使うと約280枚まで落ちるため、この2機種の中ではさらに短い側に位置する。参考までに、同じニコンのフラッグシップZ9はCIPA約700〜770コマで、Z8はそのボディ小型化と引き換えにバッテリー持ちを大きく失っている。どちらを選んでも、予備バッテリーとUSB給電を含めた電源計画は必須と考えたほうがいい。ボディの軽さで選んでも、電源装備を積めば差は縮まる。

レンズシステムと将来性:ボディ性能だけで決めない

S1R IIはライカLマウント、Z8はニコンZマウントである。40万円台後半のボディを検討する層は、たいてい既存のレンズ資産を持っている。ボディの性能差が、マウント移行の総コストを上回るケースは実は多くない。

判断すべきは3点。ひとつ、常用する焦点域の純正レンズが揃っているか。ふたつ、今後3〜5年で追加する予定のレンズがそのマウントに存在するか。みっつ、サードパーティ製の選択肢をどこまで必要とするか。Lマウントはパナソニック・ライカ・シグマによるアライアンスという構造を持ち、Zマウントはニコンが主導しつつサードパーティ対応が広がってきた経緯がある。どちらも将来性を疑うような状況ではないが、手持ち資産の有無で実質的な購入総額は数十万円単位で変わる。

もうひとつ、高画素機共通の注意点を挙げておく。4430万画素も4571万画素も、レンズの解像力が追いつかなければ画素を活かしきれない。ボディを最新にしたのに古い標準ズームを付けたまま、という構成では差が出にくい。ボディ予算を組む段階で、レンズ側の更新費用も同じ表に載せておくべきだ。

LUMIX S1R IIがおすすめな人

  • ProRes RAWのワークフローを持っている人 — 5.8K Apple ProRes RAW HQを内部記録でき、編集の入り口で変換の手間が少ない
  • メディアコストと容量に悩んでいる人 — CFexpress Type B+SD(UHS-II)に加えて外付けSSD記録に対応する
  • ジンバルやリグに載せる人 — 約795gはZ8より約115g軽く、その余力をレンズやアクセサリーに回せる
  • 手持ち低速シャッターを多用する人 — B.I.S.中央8.0段・周辺7.0段(Dual I.S.2 7.0段)はZ8の最大6.0段を上回る公称値
  • 動画のAFを重視する人 — 像面位相差779点は画面を細かく覆い、フォーカス移動を助ける
  • ファインダーの解像を取る人 — 約576万ドットはZ8の約369万ドットを明確に上回る

逆に、電子シャッターで動きの速い被写体を常用する人、高速連写を長く持続させたい人には、非積層という構造が壁になる。

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Nikon Z8がおすすめな人

  • 電子シャッターの歪みを構造的に潰したい人 — Z9と同型の積層型CMOSで、読み出し約3.7msでローリング歪みはほぼ無いと評されている
  • 高解像・高フレームレートのRAWが必要な人 — N-RAW 12bitを8.3K/60pで内部記録でき、ProRes RAW HQにも対応する
  • 動体をAFで追い続ける人 — EXPEED 7と493点、9種被写体検出+飛行機専用モードというフラッグシップ由来の構成
  • 直射日光下で撮る人 — 輝度3000cd/m²対応のEVFは、ドット数では測れない実用差を生む
  • 一瞬をJPEGで確実に拾いたい人 — C30/C60/C120のうちC120は約120コマ/秒(約1100万画素JPEG)、プリキャプチャー対応
  • 消耗部品を減らしたい人 — メカシャッターレスで、シャッター幕の摩耗という要素が存在しない

逆に、約910gを軽く扱えない人、外付けSSD記録を運用の前提にしたい人には合わない。

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まとめ

  • 画素はほぼ互角、構造が違う — 有効約4430万画素のS1R IIと4571万画素のZ8は約3%差。決定的なのは画素数ではなく、S1R IIが非積層の裏面照射CMOS、Z8が積層型CMOSというセンサー構造の差である
  • 連写は数字と実態が逆転しうる — S1R IIは電子SHで40コマ/秒(AFC対応)、Z8は約20コマ/秒。ただしZ8は積層の読み出し速度を持ち、C120で約120コマ/秒(約1100万画素JPEG)も備える
  • 8K/30Pは同じ。分かれるのはRAWと記録先 — S1R IIは5.8K ProRes RAW HQ内部記録+外付けSSD対応、Z8はN-RAW 12bitの8.3K/60p内部記録とProRes RAW HQ
  • 手ブレ補正とEVF解像はS1R II、EVF輝度と機構耐久はZ8 — 中央8.0段・周辺7.0段と約576万ドット対、3000cd/m²とメカシャッターレス
  • バッテリーはどちらも短い — S1R IIが約340枚(モニター)・約280枚(LVF)、Z8が約340〜370コマ。Z9の約700〜770コマとは別次元の運用になる
  • 価格差はほぼ無い — 市場想定475,000円前後・実売約46.3万円〜のS1R IIと、実売約46〜52万円のZ8。金額では決着しない

同じ「4400万画素級・8K対応・50万円前後」という枠に入りながら、この2台は前提が違う。S1R IIは動画の運用コストと軽さに投資し、その原資をセンサーの構造から捻出した機種。Z8はフラッグシップのセンサーとエンジンをそのまま持ち込み、代わりにバッテリーと重量で妥協した機種である。自分の撮影で最後に効くのが「歪みのない読み出し」なのか「ProRes RAWと外付けSSD」なのかを先に決めれば、価格表を見る必要はない。

出典