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結論:まず「自分の端末がどちらで話すか」を見る

USB PDとQuick Chargeを「どっちが速いか」で比べても答えは出ない。速度の等級ではなく、充電器と端末が電圧をどう決めるかという交渉の作法が違うからだ。しかも今の市場で、両者はもう対等な競合ではない。

いま売られているUSB-C端末の大半はUSB PDで話す。Appleの公式サポート文書は、iPhone 15以降について「USB-C Power Delivery充電器とUSB-Cケーブル」を使えば有線充電が速くなると書き、Quick Chargeには一度も触れていない。一方のQualcommは、Quick Charge 4以降をUSB PDと互換にする方向へ舵を切った。「PDかQCか」で悩む場面は、買い物の現場からほぼ消えている。

残るのは、PDという共通語の中で自分の端末がどの方言まで使えるか、店頭の数字のどれが第三者に検証された値か、という2点だ。

PDは「電圧の階段」、QCは「電圧のつまみ」から始まった

USB PDの基本は、決められた段に乗る方式だ。USB-IFの公式解説によれば従来のPDは20Vと5A対応ケーブルで100Wが上限だった。5V、9V、15V、20Vの階段を用意し、端末が「20Vをください」と要求して充電器が応じれば契約成立となる。段と段のあいだは選べない。

ここに柔軟性を足したのがPPS(Programmable Power Supply)だ。PD 3.0で追加された機能で、固定の段を離れて電圧を細かい刻みで動かせる。バッテリーが必要とする電圧へ近づけられるため熱損失が減る。速いというより無駄が少ない仕組みだ。

対するQuick Chargeは、もともとこの「細かく動かす」側から出発した。QC 3.0はUSB-Aの時代に独自のINOVで電圧を刻んでいた。発想はPPSに近いが、PDとは別の言語だった。そしてPD 3.1で階段そのものが伸びる。USB-IFは2021年、28V・36V・48Vの3つの固定電圧を追加し、それぞれ140W・180W・240Wを可能にしたと説明している。240Wは48Vと5Aの掛け算だ。

規格ごとの電圧と上限

規格電圧の決め方カタログ上の最大W主に使う機種
USB PD(SPR・固定電圧)5V / 9V / 15V / 20V の固定段100W(20V×5A)iPhone 15以降、ノートPC全般
USB PD PPS固定段を離れ細かい刻みで可変100WGalaxy上位機など対応端末
USB PD 3.1 EPR上に28V / 36V / 48Vを追加240W(48V×5A)高出力ノートPC、モニタ
Quick Charge 3.0独自のINOVで電圧を刻む18W前後の実装が主流旧世代のUSB-A機
Quick Charge 4 / 4+USB PD・PPSに準拠PDとして交渉2017年以降のSnapdragon機
Quick Charge 5 / 5+PD PPSとクロス互換100W超(Qualcomm公称、最大20V/7A)上位Snapdragon機

Qualcommは公式ページでQuick Charge 5+を「20Vで7Aまで」「100W超」と説明し、過去のQuick Chargeすべてと後方互換だとしている。またFAQには、認証済みアダプタは非対応端末でも使えるが高速充電の恩恵は得られない、という趣旨の記述がある。噛み合わなくても壊れはしないが、速くもならない。

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認証ロゴが保証するW数は、実はごく少ない

店頭の「100W」「140W」といった数字のうち、USB-IFの認証を通った表示はどれか。ケーブルについては答えがはっきりしている。USB-IFのケーブルロゴ使用ガイドラインは、USB-C to USB-Cケーブルが認証を通るには適切なデータレートと電力ワット数のロゴ表示が必要と定めており、表示できる電力の値は「240Wまたは60W」の2種類だけだ。同文書が列挙する組み合わせロゴも、5Gbps/60W、20Gbps/240W、80Gbps/240Wというように、電力側は必ず60Wか240Wのどちらかである。

つまり「100W対応ケーブル」に対応する認証ロゴは存在しない。100Wは20V×5Aで技術的に成立するが、それを名乗る認証マークがない以上、パッケージの100Wは自己申告値だ。第三者が検証した数字ではない、という区別は持っておきたい。

一方、充電器側のロゴは事情が違う。同じガイドラインによれば認証充電器ロゴは「さまざまなワット数ラベル」が用意され、45Wのような値も表示できる。ただしそのワット数は「最も高い電力供給能力を持つ単一のUSB Type-Cポート」に一致させなければならない。65Wと書かれていても、合計でも各ポートの値でもなく、いちばん優秀な1ポートの数字なのだ。

ケーブル:eMarkerと5A、240Wの見分け方

3Aを超える電流を流す5A対応ケーブルには、能力を申告するeMarkerチップが要る。充電器はこのチップを読んで5Aを流していいかを判断する。チップがなければ3Aで頭打ちになり、20V×3Aの60Wが上限だ。

PD 3.1のEPR対応ケーブルはさらに厳しい。電子的にマーキングされEPR固有の情報を持つことに加え、USB-IFが定めるEPRケーブル識別アイコンによる目視識別も要求される。利用者が見ただけで240Wまで使えると確認できるようにするためだ。裏を返せば、箱に240Wとあるだけで本体にロゴがない製品は確認する手がかりがない。

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PPSが効くのは、対応した端末だけ

PPS対応の充電器を買えば全部速くなる、という誤解は根強い。PPSは端末側が要求して初めて成立し、要求しない端末では通常の固定電圧で充電されるだけだ。

効果がはっきり出る代表例がGalaxyの上位機だ。45Wの「超急速充電2.0」は、PPS対応の充電器と5Aを流せるeMarker入りケーブルが揃って初めて成立する。純正45WアダプタもUSB PD 3.0のPPS対応として案内されている(メーカー公表値)。「45W対応」とだけ書かれた充電器では、PPSプロファイルがなければ45Wに届かない。60W対応をうたうケーブルの多くが3A止まりである点も見落としやすい。

iPhoneは対照的だ。Appleの公式文書は「USB-C Power Delivery充電器」を推奨するにとどまり、PPSにもQuick Chargeにも触れていない。同じ文書には、USB-A充電器ではiPhone 15以降が最大7.5Wで充電されるという記述もある。ポートの形が結果を決めている。

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複数ポートを挿すと、W数は落ちる

USB-IFは認証充電器を4つのカテゴリに分けている。各ポートが他ポートの負荷と無関係に表示どおりの電力を出せる「確保型」と、全体を分け合う「共有型」があり、共有型では各ポートが常に表示値を出せる必要はないと明記されている。そのかわり、1ポートが最高値を出しているとき残りは別の値になる旨をパッケージで知らせる義務がある。

実例で見よう。Anker Nano Charger(70W, 3 Ports)の公式仕様では、USB-C1単体なら最大70Wだが、2ポート時は45W+22.5Wまたは60W+5W、3ポート同時は45W+7.5W+7.5Wになる。3つ挿した瞬間に合計は70Wではなく60Wへ落ちる。Appleも、複数ポートの充電器やハブでは接続機器全体の消費に応じて最大出力が下がることがあると記している。この挙動は「充電が遅い」原因のかなりを占めるが、切り分け手順は別記事に譲る。

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まとめ

USB PDとQuick Chargeは、速い遅いの序列ではなく電圧の決め方の違いだった。Quick Charge 4以降がPD互換になったことで、その違いは購入時の判断材料としてはほぼ役目を終えている。

見る場所は3つに絞れる。自分の端末がPPSを使うか(iPhoneなら素直なPD、Galaxy上位機ならPPS)。充電器のW数は「最良の1ポートの値」として読み、複数挿すならポート組み合わせごとの出力表を確認すること。そしてケーブルは本体の60W/240W認証ロゴを見ること。

この点が効く。100Wや140Wを否定する必要はないが、自己申告と知って買うのと認証済みだと思い込んで買うのとでは、トラブル時の納得感がまるで違う。すでに充電が遅いなら、買い替える前に切り分けが早い。手順はスマホの充電が遅い原因は?ケーブル・充電器・本体を順に切り分けるにまとめてある。